一日一鼓【1227-1,2】
あなたはすごい
その7文字に苦しめられたあの時代。
決してすごくないことを悟り
ずっと騙されていたと人を恨んだ、時代の終局。
苦しみを自覚した彼女の口から…漏れた。
今日も新たに生まれたマメに貼る絆創膏を求めて行ったコンビニで
いつものアルバイトの彼を前に。
疲れた、と。
無自覚の不確かな言葉だった。
だから、彼の言葉に戸惑った。
肉まん、温まってますよ
その声が、
いつも下を向く彼の口から出た言葉であることを理解するのに
5秒の時間を要した。
元気出ますよ、この肉まん。俺念込めたんで
そう言ってのける彼の瞳は
私に向けられるには勿体無いくらいに
綺麗だった。