若杉栞南【 #一日一鼓 】
母はいつも物語にいて、私は対抗するように母の本を手に取らずに生きてきた。
でも、今回ばかりはつまらぬ意地を捨てて手を伸ばしたいと思った。
理由は明白だ。視線が足に馴染かけているブーツ...
若杉栞南【 #一日一鼓 】
作家としてもう歩けないと思うことないの?どうかなぁ物語の先に何が見えるのか、気にならない?私は気になるそして、その景色を誰よりも先に見られる特権が作家にはあるの母は笑った。私が見られなか...
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こんにちは【weekly-scratch #きょうのおくの& #ハカラズモVer. 】担当の福島有亮です。
このスクラッチでは映像作家 奥野倫 と、写真・映像で活動する 福島有亮 による週替わ...
若杉栞南【 #一日一鼓 】
どんな話なの?まだ主人公を掘り下げきれてないから分からないなそう言うもん?今回の場合はね。私が描く物語だったとしても、それは私の物語ではないから。作家としても、生きる上で役を担った人間として...
若杉栞南【 #一日一鼓 】
青いトラックを囲む人たちの物語。私の物語はどんなだろう。私にとってのブルータータンは_夢を見た場所_背中を追った場所_涙を呑んだ場所_足音に追われた場所高揚感と恐怖が漂う場所だった。そんな場...
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こんにちは!
【 weekly-scratch #一日一鼓 Ver. 】担当の若杉栞南です!!
今週のスクラッチのご案内です!
【 weekly-scratch #一日一鼓 Ver....
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こんにちは!
【monthly-scratch #あのひのおくの 映像・スマホカレンダー Ver.】担当の奥野倫です!
今月のスクラッチのご案内です!
【monthly-scratc...
若杉栞南【 #一日一鼓 】
今回はね、ここが舞台。この青いトラックを囲む人たちの物語を描こうかなって。一歩一歩努力を刻む人タイムを見て、水を渡して、彼らの走りをサポートする人粘れって鼓舞する人ここにはさ、色んな物語が詰まっ...
若杉栞南【 #一日一鼓 】
目を瞑るとシューズがブルータータンを弾く音が連なって聞こえる。タンタンタタンタタンタン2人の人間の異なるリズムが偶に合い…タッ/“踏み込んだ”そう感じて目を開けると連なっていた2人の距離がひらく...
若杉栞南【 #一日一鼓 】
幼い頃から母の取材を見てきた。取材の先に広がる景色は全く別の世界で繰り広げられていて退屈な世界も、厳しい世界も、深刻な世界も見てきたつもりだった。私が何も知らなかったらブルーを踏み締める彼らはど...
若杉栞南【 #一日一鼓 】
母がページを捲った物語は続いていく。登場人物たちは5歳ずつ年を重ねた。走り出せない弱さを持ったままの私も。
でも母は振り返り、言った。
「取材、一緒に行く?」
それが「歩かない?」という誘...
若杉栞南【 #一日一鼓 】
向かうのはテーブルばかりで見ているのは文字ばかりだと思っていた。でも母が走っていたのは私が生まれるよりもずっと前からで闘い続けて、粘り続けて私が止まろうとしても母は止まらなかった。そうやって背中...
若杉栞南【 #一日一鼓 】
慰める訳でも、軽蔑する訳でもない。ただ「もう出会えないなんて誰が決めたの?」と問いかける母の瞳は真っ直ぐにこちらを見据えて「止まるの?」と聞いている。「あなたは、そこで止まるの?」母の瞳の奥底に...
若杉栞南【 #一日一鼓 】
母は母であり同時に作家だった。「そんなにも病みつきになるのはどんな瞬間を知っているからなの?」怪我を知ると母はそう聞いて私の中に眠るページに手を伸ばす。「まるで凪みたいだ。それにしても、その瞬間...
若杉栞南【 #一日一鼓 】
左足のふくらはぎが肉離れを起こしたのは高校最後の全てをかけた夏だった。あの夏、あの瞬間、ぷつりと音をたてて私の中の何かが切れた。繋ぎ止めたのは…何も感じない数分間を凪と言った母の言葉。「まるで凪...